今から25年前の夏、愛知県予選で打率7割以上を記録した一人の高校球児がいました。
好投手としても注目されていた逸材だったその球児は、プロ入りして数年後には日本を代表するスーパースターとなり、更に後には世界最高の安打製造機として全世界に知られるところとなりました。
この球児とは、言うまでもなくイチロー選手のことです。このイチロー選手を始めとして、愛知県はプロ球界に多くのスターを送り込んできた「野球王国」でもあります。
古くは「史上最強のアンダースロー」杉浦忠投手も愛知県の挙母(現豊田西)高校出身。「ミスター・パーフェクト」槙原寛己投手は大府高校よりドラフト1位指名されました。同年代の現ソフトバンク監督、工藤公康投手は名古屋電気高校(現愛工大名電)。
現役選手では岩瀬仁紀投手に藤井敦志選手、堂上兄弟に堂林翔太選手などなど、中日ドラゴンズを中心に多数の選手が愛知県の高校で育っています。
そんな愛知の高校野球界で、今夏注目すべき選手はいったい誰なのか?どんな選手が甲子園を騒がせドラフト会議の目玉となる「スター候補」なのか?
今回は2016年夏、愛知県の高校野球界を騒がせるであろう要注目の逸材について紹介します。
投げては146キロ!打っては通算39発!1位候補、東邦・藤嶋健人

まずは目下の愛知県最注目選手、東邦高校の藤嶋健人投手について紹介しましょう。
藤嶋投手は176センチ80キロの右投げ右打ち。投手としてはゆったりとしたフォームから最速146キロの直球を度胸良く投げ込む好投手です。
高い腕の位置から放つ直球には角度と手元での伸びがあり、プロスカウトからも「球速以上のものがある」と評されています。
また、直球だけでなく非常に変化の大きいカーブも武器としており、こちらも各球団のスカウトから「松井祐樹のスライダーの様だ」「ソフトバンクの武田みたいだ」と、プロの世界の一流投手の代名詞的変化球になぞらえて称されるほど高い評価を得ています。
今春の選抜では1回戦の関東一戦で9回2死まで1安打無失点11奪三振の圧倒的なピッチングを披露し、その評価をさらに確固たるものにしました。
昨秋の東海大会では岐阜県大会準優勝の中京を7回参考記録ながらノーヒットノーランに封じ込めたこともあり、調子のいい時には強豪校でも全く手の付けられないピッチングのできる投手だと言えます。
また、現時点で高校通算39発を放つ打者としての長打力もプロから注目されており、センバツでは2試合で8打数3安打1二塁打と実力を発揮。
フォロースルーの大きさなどスイングの良さを評価する声も多く、「投打両面で上の方」「投手か野手かこちらが判断に迷う素材」「投手でも野手でも面白い」と言った評価を各球団から受けています。
「豊作」と見込む声が多い今年のドラフトの中にあっても「1位入札もありうる」「外れ1位では消えるだろう」と評価される高校球界きっての逸材であり、今夏の愛知県大会の、更には甲子園の主役となりうる将来のスター候補と見て間違いないでしょう。
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藤嶋だけじゃない!東邦の擁する140キロトリオ投手陣に注目せよ!

藤嶋投手は群を抜いてプロからの注目度の高いスター候補ですが、実は、東邦には好投手かつ強打者の逸材がもう一人います。それが、松山 仁彦投手です。
177センチ73キロの左投げ左打ちで、サイド気味の腕の振りから最速143キロの直球とキレのあるスライダー、130キロ台のチェンジアップとカットボールを織り交ぜて打者を打ち取る松山投手。
先述したセンバツ関東一戦で9回2死からマウンドに登ったのがこの松山投手で、しっかりと打者一人を打ち取りました。2年秋には6試合25回3分の一を投げて36奪三振、防御率は実に0.36と抜群の安定感を見せつけました。
全国区のエース藤嶋投手に先発を譲る試合がどうしても多くなっていますが、藤嶋投手と比べても負けず劣らずの実力を秘めた好投手だと言えるでしょう。
投手として登板のない時は外野手として出場しており、今春のセンバツでは藤嶋投手と同じ8打数3安打1二塁打という成績を残し打力を証明。
昨秋の東海大会決勝・いなべ総合戦では1試合2本塁打に加え三塁打も1本マークするなど、大舞台への強さと長打力には定評があります。
センバツ前の練習試合に登板した際には複数球団のスカウトがビデオ撮影を行う姿が見られるなど、投打両面でまぎれもなくプロ注目の逸材です。

ちなみに東邦高校にはさらにもう一人140キロを超える球速を持つ投手が居て、それが176センチ70キロの右投右打、近久 輝投手です。
近久投手の最速はなんと藤嶋投手を超える147キロ。大きなテークバックから角度をつけた腕の振りで繰り出すこの直球と鋭い縦のスライダーのコンビネーションが持ち味です。
好投手かつ好打者の二人を要する東邦にあってはなかなか登板機会に恵まれず、公式戦初先発となった昨秋の明治神宮大会では143キロをマークしながら3回3失点KOとなるなど、経験や実績の面では課題を残す投手ではありますが、県下随一の速球投手であることは間違いなく、今後が非常に楽しみな素材と言えます。
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広角に打てる高校通算42発の大砲!愛工大名電・高橋 優斗

ここまでは東邦高校の3人の投手陣に絞って情報をお伝えしてきましたが、イチロー選手の出身高、愛工大名電も負けてはいません。4番を打つのは高校通算42本塁打の三塁手、高橋選手です。
高橋選手は180センチ80キロ、右投げ左打ちの強打のサード。1年秋から遊撃手としてレギュラーを務め、1年時に16本、2年時に24本の本塁打を積み上げてきました。
高校通算42発というのは今春の県大会時点の数字であるため、夏の大会までに更に本数を増やしているものと思われます。
本人も「センターから左に打球が飛ぶのは調子がいい時」と語っているように、逆方向へも長打を放てる打撃技術も長打力と並ぶ大きな魅力であり、プロのスカウトもその点を評価して「今後の成長が楽しみ」とコメントしています。
また、打撃力だけでなく遠投100メートルの強肩、1年時には遊撃手も務めた送球の精度と軽いフットワークもアピールポイントの一つで、一塁到達も4.2秒とスラッガーとしてはかなり速い部類に入ります。
2年夏予選には22打数12安打の打率.545をマークするなど打撃の安定感にも定評があり、プロレベルでも欠点となるような部分がどこを見てもなく、加えて非常に評価の高い長打力を持ち合わせている、完成度の高い選手だと言えるでしょう。
新チームでは主将も務める高橋選手が夏の大会でさらにスケールアップした姿を見せてくれれば、今年の愛知県大会は更に面白いものとなるのではないでしょうか。
まとめ
今回の記事では東邦高校が誇る粒ぞろいの投手陣3人と、愛工大名電の長距離砲高橋選手について紹介しました。
どの選手もプロのスカウトが熱視線を送る逸材であり、中でも藤嶋投手は今後の活躍次第で今秋ドラフトの主役となりうるポテンシャルを持った選手であると言えます。
今年も7月9日より、愛知県の各地で球児たちの暑い夏が幕を開けます。
最注目校としてはやはり好投手の揃う東邦高校ですが、今回紹介した4選手以外にも数多くの好投手・巧打者が県内には存在しており、大会期間中に今夏の主役となるニューヒーローが誕生する可能性も十分にあります。
「王者」東邦がセンバツに続いての甲子園出場となるのか?並み居る強豪がそれに待ったをかけるのか?それとも…。
今年も愛知の夏はアツくなりそうです。
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